大きく発展する徐家剣道チーム
2018年に韓国の仁川で開催された第17回世界剣道選手権大会では、徐家剣道チームの劉有元が男子チームの監督として団体第三位を獲得し、12年ぶりに世界選手権に名を連ねた。
劉有元は12歳で徐恒雄と出会った。生家は中華武術館を開いていたが、劉有元は剣道場に通いだした。剣道に内在する精神的な鍛練に魅せられたからだと語る。
その剣道人生において数多くの師の指導を受けたが、徐恒雄からの影響が一番大きかった。徐師範の教えと、自身の努力とがあって、中学三年生で全国大会に優勝し、海外の試合に参加するようになった。
世界剣道選手権の代表選手に五回選出されたが、劉有元自身は1997年の京都での試合が最高の試合だったという。相手は日本の剣士宮崎史裕(全日本選手権優勝)だったが延長戦となり、今でもネットにアップされている。この年には、彼は敢闘賞を受賞している。
剣道は身体と共に心も訓練する。剣道はスポーツの一つだが、現在も究極の目標は単なる勝敗ではなく、剣士の心構えであり、精神の集中なのである。試合の緊張に屈せず、気剣体が一致した一本を取ることである。
現在も剣道を究めようとしている劉有元は「徐師範の考え方と精神を受け継ぎたいのです」と、2000年に自分の剣道場を開設した。
夜7時近い剣道場には、弟子たちが次々に入ってきて、師範に挨拶すると、床掃除を始める。掃除が終わると着替えて、正座して黙想に入り、心身を落ち着かせて、ようやく今日の稽古が始まるのである。
すり足三歩、面、小手、胴の打突と稽古は進むが、その間、劉有元は足さばきの重要性を常に強調する。相手との距離を測れれば、得点につながる。打ち込むにあたり、弟子には全力を出して、気剣体の一致を図るように教える。剣道の打ち込みの速度は極めて速く、竹刀一振りはわずか0.19秒である。これには毎日数百回も素振りし、繰り返し練習することで、筋肉に自動的な反応を記憶させることで、試合で平時の修業の成果を発揮できるようになる。言うは簡単だが、実行は難しく、修練する者の課題であり、道場の壁に書かれた「百錬百達」の四文字の奥義でもある。
夜も深まり、道場には竹刀の打ち合う音と掛け声が響く。その空間に、小学生の女の子の小さな姿が私たちの注意を惹いた。背丈に近い竹刀を持ち、恐れ戦くことなく、しっかりと足を踏み出して面を練習する。その姿は劉有元の「剣道が私に与えた最大の影響は誠の一字です。何をするにも誠の力をもって当たる事こそ、真なのです」という言葉を思い起こさせる。剣道の道理は人生にも影響を与えてきたが、それは台湾の剣道の歴史にも見て取れるのである。
剣道では、気、剣、体の三つが一致して初めて有効な打突ができるとする。.
剣道では、気、剣、体の三つが一致して初めて有効な打突ができるとする。.
礼に始まり礼に終わる。剣道は身体だけでなく精神も鍛えるスポーツだ。
礼に始まり礼に終わる。剣道は身体だけでなく精神も鍛えるスポーツだ。
劉有元は一回一回の打突に全力を注ぐよう弟子に求める。全力を注ぐことこそスポーツの精神である。
劉有元(右から4人目)は、徐恒雄の精神を受け継いで剣道の精神を発揚し、次の世代の代表選手を育成している。その娘の劉家榕(左から4人目)も台湾代表選手の一人だ。
精進してこそ進歩する。剣道は「誠」の一文字に尽きる。