中学までの夏休みの思い出と言えば、ベッドに入るたびに痛くて悲鳴を上げたことだ。昼間は一日中、瑞浜の海水浴場で遊んでいたからである。海風はさわやかだが、一日中強い日差しを浴び、翌日には背中は真っ黒になっていた。中学卒業後は台北に移り、それ以来あの砂浜には行っていない。浜海公路が開通し、あの思い出の砂浜も完全に消失してしまった。
2012年末に「バイク台北」シリーズの撮影を一時中止した時、たまたま東北角を訪れた。その海岸線は、子供の頃の記憶とはかけ離れた、まったく見慣れない風景になっていた。そこで、積み上げられたテトラポッドを撮影し、これが『海岸線』シリーズの始まりとなった。「島の子供」を自任する私たちは、この小さな島の1100キロに及ぶ海岸線について、どれだけ理解しているのだろう。
バイクに乗って台北を出発し、浜海公路を一路南へ。分かれ道があればできるだけ海岸線に近づこうと入っていく。台北から南へ雲林まで行く途中、こうして初めて麦寮を訪れた。それまで私にとって一つの地名に過ぎないかった麦寮が、このバイクの旅で忘れられない地となった。
これまで何人かの先輩写真家とこのテーマについて話し合ったことがある。「海岸線をテーマに撮影した人は大勢いるのに、なぜまたこれを撮ろうとするのか。他の人と違う視点でもあるのか」と問われたが、当時の私はただ「撮らなければ」と感じただけだ。そこには何かがあると思えたが、それが何かはよくわからなかった。それから4年、今は分かる。私が撮り始めた理由は、これらの写真の中にあるのだ。