太い黒縁眼鏡にカジュアルなジャケットの洪裕鈞は、三つの会社の社長らしく、品のいい感じに見える。しかし、最愛の車を語り出すと、車好きの熱に加えて、実業家らしくトレンドの変化を鋭敏に観察し、インダストリアル・デザイナーとしての素養も兼ね備えている。その熱さは、車を知らない人にも伝わるだろう。
洪裕鈞によると、自分は正真正銘の技術マニアだという。マーケティング分析によく使われる新技術のライフサイクルを用いて、新技術の拡散について、釣り鐘型の拡散曲線を描き、段階ごとにイノベーター、初期ユーザー、一般化、大衆化と最終追随者に分ける。彼自身はユーザー全体の2.5%しかいないイノベーターである。このタイプのユーザーは、トレンドの変化を感じ取ると、ただちに試してみたくなる。テスラもそうだし、アップルもそうなのだが、これは車に影響されたものだという。
「車は完全体験の製品なのです」と洪裕鈞は説明する。外観、内装からアクセルにハンドルの反応など、すべてがドライブの楽しみにつながり、毎回のドライブの喜びを生み出す。その毎回の独自の体験は、隠されたドアを開けて不思議な世界に出会う機会に似ている。「体験は無上の価値」と洪裕鈞は話す。
7年前に世界で2400台に限定販売されたテスラを購入し、電気自動車の動力の効率の高さと加速性能、車内空間の自由度など、ガソリン車にないメリットで車に対するイメージを一新した。初期バージョンとして欠点だらけなのは知っていたが、これが新しい次元を開き、スマホのように、一度使うともう後に戻れないと感じた。
この初代テスラは内湖にある行競科技公司のエントランスに置かれていて、電気自動車の革新性と無限の可能性を示している。
四つのモーター、1341馬力…不思議とも言える設計が、間もなく発表されるEVスーパーカーMiss Rに実現した。(行競科技提供)