長年蓄積してきた舌の記憶は永遠に消えることはない。かつての眷村(外省人や軍人が集まって暮らしていた地域)の牛肉麺、台南名物の油で焼いた虱目魚、客家の草団子など、口に入れた瞬間に「ああ、この味!」とうれしくなる感覚は、何ものにも代えがたいものだ。
台北の蟾蜍山の集落では、花蓮県寿豊のアミの集落から黒竜江省出身の佟さんに嫁いだお母さんが、中国東北の名物である白菜の漬物を上手に作る。新竹県北埔の客家集落から江蘇省出身の葉さんに嫁いだ女性は、客家の草団子も作れば外省麺も作る。それぞれの出身地の味覚が、さまざまなエスニックの間で融合している。
台湾では美食だけでなく美酒も作られる。樹生酒荘の「埔桃酒」、威石東ワインヤードの「木杉」ブドウのワインは、いずれもこの大地で、絶え間ない研究とチャレンジを経て生まれた美酒である。台湾の若いシェフ、程翔珈と蕭淳元、それに東南アジアから嫁いできた女性が作る南洋の料理などが台湾の美食をさらに多様で素晴らしいものにしている。これらは美食家を唸らせるだけでなく、作り手の思いも伝わってくる味だ。
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教育は国家百年の大計と言われる。シラヤ文化の復興に努力する萬家の三世代、そして「反転授業」に取り組む王政忠は、台湾の次の世代のために希望の種をまいている。
逯耀東教授や孔令晟中将、宋楚瑜氏ら政府高官や要人が襟を正して耳を傾けたのは、国学の大家・銭穆先生の「最後の講義」である。銭穆先生は今は亡き人だが、その文人、教育者としての面影は今も旧宅である素書楼のそこここに残っている。
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『光華』の写真チームは、この夏に開かれたユニバーシアード台北大会に当り、シャッタースピード2000分の1秒のカメラで凝縮された瞬間をとらえ、アスリートの魅力を再現した。
芸術は生活のさまざまな形態を反映するもので、ストリートのグラフィティアートも、今では正統の芸術作品として受け入れられている。
画家・江賢二の作品「百年廟」は、台北の龍山寺で祈りを捧げていた時、大勢の参拝客の敬虔な姿を見てインスピレーションを得たものだという。グラフィティアーティストBounceは、台中市東勢のレストランの外壁に描いた作品に現地の文化や特色を取り入れ、アブラギリの花や柿、神獣などを描き込んだ。
故郷の味への思いも、百年の計たる教育も、琴線に触れる芸術作品も、宝の島・台湾の大地が育むエネルギーである。今月号の『光華』も、皆様に台湾の美とエネルギーをお伝えする。