隠れた、偉大なヒーロー
長興の世界進出の第一歩はアメリカでの子会社設立だった。「我々は外国のドライフィルムフォトレジスト技術と対決しなければならないため、米国子会社設立が第一歩となりました。リスクは大きいですが、市場を獲得してトップの座を取るためには避けられない一歩でした」と毛惠寛は言う。電子産業はますます発展すると見られ、ドライフィルムフォトレジストの需要も急増していたタイミングで海外進出を決めた。その頃、電子材料部門の指揮を執っていた毛惠寛は、戦略決定にも参加していた。そして2003年、米国子会社を通して、プリント基板と半導体製品のトップであるシプレイ社傘下のフォトレジスト部門とその技術を買い取ったのである。これによって長興はドライフィルムフォトレジストの分野で世界シェアトップの座につき、その地位は今も変わらない。
あらゆる成功は偶然のたまものではない。「長興において、最も隠れた偉大な存在は一人ひとりの社員です」と毛惠寛は言う。総経理に就任してからは、その考えはさらに明確になった。「新製品の開発も従来の製品の改良も、たいへんな困難を伴います。拡張計画を決めた時は、第一線の製造工程の従業員がスケジュールを厳守して顧客を満足させなければなりません。後方の研究開発部門では、潜在力のある新材料を絶えず研究しなければならず、しかもサステナビリティにも配慮しなければなりません」
長年にわたり、長期計画に従って安定的に歩んできた長興だが、失敗の経験がないわけではない。「最大の打撃となった二度の失敗は、重要な学習の機会でした。長興は常に環境保全を重視し、厳格に対応してきました。しかし、かつて認証を取得した甲級廃棄物処理工場が高雄の水資源を汚染してしまったのです。それから20年、私たちは全面的な改革を進め、無毒、無汚染のリサイクル可能な材料の研究に力を注ぎ、化学廃棄物の処理工程を厳しくコントロールしてきました」
もう一回はリストラの危機だった。当時、光学技術が発達して長興も光学薄膜の開発製造に取り組んだが失敗に終わり、その部門の工場を閉鎖しなければならなくなった。「そこで従業員をどうするべきかが喫緊の課題になりました」と言う。「高総裁は創業当初、社員は家族同然なのだから本当に致し方ない時を除いて解雇してははらないと言いました。長興は今もこの理念を実践しています。最終的に、その工場では一人も解雇しませんでした。一人ひとりの強みを分析し、ふさわしい欠員に充てたのです」と言う。
では、どのようにして欠員を生み出したのかという問いに対する答えに、長興の成功の要因が見て取れる。「新製品の開発、新技術の研究、新市場の開拓が、会社と社員に安定的に利益をもたらし、共存共栄が可能になるのです」
従来の合成樹脂技術は研究開発によって絶えず進化し、それがさまざまな産業分野の新たな材料となる。長興は従来型産業とハイテク産業の壁を越え、両者を盛り立てているのである。
長興が開発した新型コロナウイルスの検査キット。すでに認可を得て使用されている。
2020年末に開催された国際建材見本市で、長興材料は開発力を示し、将来性のあるグリーン建材を披露した。(荘坤儒撮影)
創業以来、長興は積極的に社員の教育訓練を実施し、学習の機会を増やしてきた。
世界シェア第3位の紫外線硬化技術による特殊塗料。化粧品のボトルや容器などに用いられている。
1990年設立の高雄大発工場には最初の精密塗布の生産ラインがあり、ドライフィルムフォトレジストの研究開発と生産はここで行われている。