台湾の大学への進学
台湾学校の生徒の通学範囲は広く、スクールバスの路線も実に広大で、遠くは片道2時間近くになるところもある。遠くから通う子供が早めに帰れるよう、学校では昼休みをなくし、15分で給食を食べ終えたら、急いでバスに乗る。
陳園長によると、台湾人が子供を台湾学校に通わせるのは、後に台湾の学校に順調に進学できるようにするためだ。
同校の保護者会会長の王雅芳さんは、ベトナムでビジネスを始めて8年、息子さんは小学5年生である。台湾学校を選んだのは、将来、海外在住子弟向けの試験を受けて台湾の大学に進学させたいからだという。
年々低下する生徒の国学能力を補うために、小学校と中学校では、自習の時間に『三字経』『弟子規』『唐詩』『宗詞』などの古典を読ませ、暗唱させている。
「台湾学校は非常に重要な役割を担っています」と話す潘校長によると、同校高校部門の卒業生の9割は台湾の大学に進んでいる。華僑や帰国子女、外交職員子女などの優遇措置もあり、企業経営者の二代目、三代目も台湾で大学を卒業し、再びベトナムに戻って親の事業を継ぐ。そのため、台湾の学校に順調に進めるようにすることが同校の最大の任務であり、言い換えれば、華語教育の質が非常に重要なのである。
このほかに、同校は華語教育推進の使命も担っている。毎週土曜日には他の学校の生徒や地元の人々のための華語文カリキュラムを実施しているのである。教務主任の詹紹威さんによると、「土曜華語文推進クラス」はすでに14年も続いており、児童コース、上級コース、国際児童華文コース、外国人コースなどがあり、毎年500人以上が受講を申し込んでいる。その数は海外にある台湾学校5校の中でトップだという。
困難の中で将来を展望する
ベトナムに暮らす台湾人にとって、台湾学校は教育という重要な役割を果たす他、国慶節の国旗掲揚や祝賀会など、年に一度の重要なイベントの場でもある。ただ、時代と環境の変化とともに、乗り越えなければならない課題も増える。
例えば、誘因が少ないため、教員の離職率が高い。また、学校の敷地として借りている土地が年に3センチのスピードで地盤沈下しており、毎年補強しなければならない。校舎も不足しており、遠くから通う生徒を十分に収容できないことなどが挙げられる。
このほかに、教材や図書などの入手も容易ではない。今学期は南シナ海の問題もあって、社会科の教科書がベトナム政府の審査をパスできず、教科書が使えないという問題も起きている。
だが道は必ず開けるもので、教科書がなくても社会科の授業はきちんと行われている。記者が学校を訪れた日、5年生の生徒たちは社会科の一環として「異国グルメカーニバル」を催し、お母さんたちが用意したたくさんの料理を味わっていた。もちろん、ベトナムの春巻やフォーもある。ホーチミン市台湾学校は、海外で架け橋としての役割を果たすとともに、融合の手本をも示しているのである。