トリリンガルのYouTuber
学生時代に懸命に英語の発音を練習した頼咏華は、一年にわたるオーストラリア旅行で英語を話す度胸もついた。今では多くのネットユーザーが彼に英語の勉強方法を教えてほしいとメッセージを送ってくる。しかし「台湾人は英語をあまりにも重視しすぎています。そこで私はこれを逆手に利用することにしました。私にとって英語は一種のパフォーマンスで、これを通してより多くの人に私の考えを伝えたいのです」
「私は台湾語が消失してしまうという問題を多くの人に伝えたいのですが、華語は話したくありません」と言う。そこで、自分が話せる華語以外の言語は全部使うことにした。一つでも多くの言語で話せば、その分だけ、多くの人が聞いてくれるかもしれない。話せるのは台湾語、英語、客家語で、それが彼のトレードマークとなった。彼はYouTubeに「足英台三声道磅米芳(Tsiok Ing Tai)」というチャンネルを設け、すでに4万8000人のフォロワーがいる。さらに彼はニューヨーク出身で台湾に在住する阿勇とともに「英台EXPRESS」というコーナーも制作している。毎週、英語のニュース1本を台湾語に翻訳し、台湾語のニュースを英語に翻訳して紹介する。「見た目の良さや面白さでは他のYouTuberにかないませんが、翻訳は悪くないと思います」と言う。天気から教育や半導体、カンガルーなどの用語まで使い、皆が台湾語でさまざまなことを議論できるようにしたいと考えているのである。
世界に目を向けると、多くの国の人々が自分たちの言語の重要性に気づき始め、消失しつつある言語を救うために資源を投入し始めている。イギリスのウェールズ語、日本の北海道のアイヌ語、ニュージーランドのマオリ語など、と頼咏華は例を挙げる。これらの言語は優勢な文化の衝撃を受け、文化と言語の保存が難しくなっている。しかし、意識の覚醒を通し、政府部門も母語の研究や保存を奨励し始めている。最も重要なのは、「人々が母語を話すことを誇りに感じることです」と頼咏華は言い、この点において台湾人は深く考え、海外を参考にするべきだと考える。
二度と華語は話さないことを、どう決意したのかと問うと、彼は香港の民主化運動について語り始めた。「香港人に、なぜ闘うのか、運動は成功すると本気で思っているのか、と聞いてみてください」と。「私も(『台湾語の存続』が)成功する確率は高くないと思っていますが、仮に成功しないとしても、やらなければならないのです。最初から、成功するか否かの問題ではなく、私自身が『やらなければならない』ことなのです」
まだ言葉を話し始めたばかりの幼い頃、母親がどんな言葉を教えてくれたか覚えているだろうか。家に帰ったら、母親の言葉を少しでも学び、話してみよう。母語存続のために力を尽くすことで、台湾は多様な文化を残していける可能性が高まるのである。
ポン!という音がしたら、釜の圧力を抜く。 この時、米はもう膨らんでいる。
頼咏華はニューヨーク出身で台湾在住の阿勇とともに動画「英台EXPRESS」を制作し、台湾語と英語でニュースを討論している。台湾語でも日常のコミュニケーションに困ることはない。
頼咏華は講演の中で、言語は文化の媒介であり、母語を話す人がいなくなれば、一つの文化は大きなダメージを受けると語る。