大切な人と人とのつながり
台湾の生徒や教員は幸運で、コロナによる学級閉鎖などは起きていない。しかし、海外留学を予定していた学生にとっては、学費も納入したのに留学先が入国禁止になったり、オンライン授業しか行われないといった問題が出ている。
そこで清華大学、台湾大学、交通大学では、こうした学生のために、フレキシブルなカリキュラムを設けている。
そのひとつ、清華大学「為公書院」の黄一農‧院長はこう述べた。「多くの学生は、新型コロナウイルス感染拡大のために留学できなくなり、自分は運が悪いと考えています。しかし見方を変えれば、為公書院での学習は人生における特別な経験になるでしょう。本来は7ヶ国の43の学校へ留学するはずだった学生が、コロナの影響でクラスメイトになったのですから、将来も励ましあえる仲間になるはずです」と。
為公書院では、台積電(TSMC)慈善基金会の蔡能賢CEOや、力旺電子(eMemory)の徐清祥CEOといったドリーム級の先生から個別にカウンセリングを受けることもできる。UCLAに留学する予定だった李致翰は、中央研究院アカデミー会員の江安世氏が主宰する脳科学センターでショウジョウバエの研究ができるようになった。
米国のパデュー大学への留学が決まっていた一年生の張有秩は、清華大学の宿舎で深夜12時から翌朝9時までオンラインで米国の授業を受け、昼間は清華大学で工学を学んでいる。カナダ留学が決まっていた王品涵は、高校時代から米国留学を目指して勉強し、ようやく夢がかなったのにコロナ禍で留学できなかった。だが今は、何かを犠牲にすれば得られるものがあると考えている。為公書院では、異なる分野の学生とも知り合え、リアルな関係が得られるのである。
黄一農院長は、こうした留学予備学級は、将来の新たな留学方式になるかもしれないと考える。コロナ禍がもたらした変化は大きいが、ここから学習と教育の新たな可能性を見出さなければならないのである。
清華大学「為公書院」で、名誉院長の李家維教授が、夢を見出しそれを実現する道を教授する。(為公書院提供)
清華大学「為公書院」の黄一農・院長は、世界トップ100の大学へ留学できるはずだった学生たちを為公書院が受け入れることは、国に代わってこれらの学生をサポートすることであり、「自分の子供のように」向き合っていると語る。
為公書院では、コロナ禍で留学できなくなった学生のために体育の授業も行ない、夜間にオンラインで行われる外国の授業に耐えられるよう、体力をつけさせている。(林旻萱撮影)