麺を食べたことが始まり
「私は36歳でやっと自分のしたいことを始めました。一生かけてそれをやり終えるつもりです」陳俊朗は書屋を始めて気づいた。「子供たちの問題を解決しようとする中で、何度も困難に遭い、精神的打撃も受けましたが、解決できた時はさらにエネルギーとなって前進できました」
都会で様々な職業を経験した陳俊朗は、子供とともに過ごそうと帰省し、ついでに書記官を目指して試験勉強するつもりだった。だがその人生は、麺を食べに行ったことがきっかけで変わる。
2000年のある日、二人の子供を連れて麺でも食べようと出かけた途中で、小学生の息子の同級生に会い、一緒に食べようと誘った。自分も息子もいつも2杯食べるので、その同級生にも2杯目を注文した。食べ終えてすぐ、その子は食べたものをすべて吐いてしまい、申し訳なさそうにこう言った。「僕、もう長いこと、こんなにたくさん食べたことがないから」
その子は両親が離婚、父は失業後酒に溺れるようになり、この3年、満足な夕食を食べたことがなかったという。陳俊朗は子供の宿題や勉強を毎晩見てやっていたので、その子も誘ってみた。すると毎晩7時半には家にやって来るようになった。雨の日も風の日も、それは4ヶ月続いた。
だが突然、その子は来なくなり、訳を問うと「勉強したくなくなった」と言う。詳しく聞くと、クラスで1位になったので母親に成績表を見せようと再婚先の花蓮まで行ったが、いくら1位になっても母親は戻って来てくれないことに気づいたというのだ。幸い、ケンカ仲間たちの誘いがあって書屋の方には通ってきた。
「どんなにカッコつけている子供でも、人の手を必要としています」伝統家屋の陳家は開け放しで、中からギターやボール遊びなどにぎやかな様子が伝わってくるので、次第にやってくる子供が増えて多い時には60人を超えた。その子らの多くは、学校から帰っても親に酒を買いに行かされたり、当たり散らされたりし、お腹がすいても気づいてくれる人はいない、或いは家には祖父母しかいないのだった。
そうした現状を目の当たりにし、何とかしたくなった陳俊朗は、皆のために大量の夕食を作り、自分の受験勉強は放り出して、子供たちの宿題や復習を見るようになった。
台東の省道沿いに建つ青林書屋。自分たちの手で自力で建てることで夢をかなえる物語を伝えている。