ウイスキーの熟成年数に新たな定義
酒造職人の努力によって、台湾の気温の高さが酒精強化ワインの醸造に向いていることが分かり、ここからウイスキー生産にも希望の光が見えてきた。
スコットランドとアイルランドで生まれたウイスキーの現在の主な生産地と言えば、スコットランド、アメリカ、カナダ、日本などが挙げられ、いずれも温帯に属する。一方、代表的な台湾ウイスキーとしては金車のKAVALAN(カバラン)に続いて、南投酒廠が挙げられる。
十数年前、金車グループの李添財董事長が台湾独自のウイスキーを作りたいと提案した時、スコットランドや日本の専門家は難しいと考えていたが、幸い、スコットランドのDr. Jim Swanの協力が得られた。まずウイスキーの味や香りを科学的にデータ化し、宜蘭の気候や水質などをスコットランドのそれと比較して調整を進める中で、最大の課題は、蒸留したての新酒と木製の樽の熟成反応であった。
そうして予期せぬ結果が出た。高温多湿の気候が熟成期間を5分の1に短縮し、これが台湾ウイスキーの特色となったのである。「KAVALANウイスキーは熟成年数の定義を打破しました」とブレンダーの張郁嵐は言う。国際コンペティションでも、熟成5~6年の台湾ウイスキーが、20~30年もののスコッチと誤解されることもあり、次々と受賞して世界から注目を浴びた。
これは、夏は暑く、冬は寒くて湿度が高いという宜蘭県員山の自然環境がもたらす恩恵でもある。高温によって樽の成分が溶け出しやすく、湿度は酸化反応を助ける。この繰り返しと、雪山山脈から得られる質の高い水が芳醇なウイスキーを生み出したのである。
台湾ウイスキーの可能性が注目され、市場が拡大したことで、南投酒廠もウイスキー生産の列に加わった。台湾中部の果物産地にあって、それまでは果実酒を作っていたが、二次熟成の技術を用いて従来のウイスキーにライチや梅、ブドウなど台湾の果物の風味を加えて特色を出し、ヨーロッパで愛されている。
KAVALANで首席ブレンダーを務める張郁嵐は、KAVALANウイスキーは熟成年数や産地、気候などの常識を覆したと語る。