ベテランブロガーで、36歳の時に観光産業へと進出した工頭堅。海外旅行ガイド、達人の旅の案内人、歴史マニアなどとして知られている。2015年にPantravel旅飯を創設、2017年にはRice Tour米飯旅行社を設立した。海外市場を開拓するだけでなく、台湾の地方創生やローカルな小旅行の動向にも関心を注ぎ、文章を通して提案もしてきた。国内旅行は人生の最終段階での仕事にしようと思っていたのだが、新型コロナウイルスの流行で、その計画を前倒しすることとなった。
海外旅行から国内旅行の市場に切り替えるのは、工頭堅にとっては難しいことではなかった。パートナーとともにガレージ起業の信念を貫き、会社は常に小規模に抑えている。そうした中で、酒の醸造所を巡る「酒鬼バス」ツアーは彼自身の趣味を合わせたテーマツアーとなっている。
常に消費者をツアーに参加させる誘因を考えている工頭堅は「達人が案内するテーマ旅行」を主力としてきた。もともと酒が好きなこともあり、最近は内外の醸造所を訪ね歩き、各地の風土が生み出す独特の酒を旅のテーマにすることを考えていた。多くの醸造所は郊外にあるが、酒を飲めば自分で運転できないため、これがツアーに参加せざるを得ない要因となると言って工頭堅は笑う。
早くも2020年2月に鹿児島の地酒巡りツアーを主催したところ、大きな手応えを感じ、自信を深めていた。そこへ突然、新型コロナウイルスの感染拡大が生じたため「酒鬼バス」ツアーは国内旅行に転換し、まず宜蘭県からスタートすることにした。「宜蘭には醸造所が10ヶ所もあるのをご存じですか」と言う。新型コロナの影響で各国が国境を封鎖し始めたため、旅行業者が最初にダメージを受けることとなった。しかし、工頭堅は自身のフェイスブックを見て、多くの同業者が台湾各地を訪ねて新しいツアーを考案しているのを知り、力づけられた。「これは皆が台湾を新たに発見するよい機会になります」と言う。
「長年にわたり、私たちは台湾旅行をどう説明すべきか知りませんでした」と言う。周辺の東南アジアの国々と比べて、台湾に行かなければならない特色はどこにあるのだろう。「台湾の唯一無二の特色は東岸の山と海にあります。ユーラシアプレートと太平洋がぶつかる場所でカヤックを漕ぎ、中央山脈が最初に隆起した岩——烏角岩を見るのは、忘れられない体験になります」と言う。
「ウィズコロナの時代、海外旅行はできないのですから、私たちは新たに台湾を発見し、理解しなおそうではありませんか」と工頭堅は力強く語った。