コミュニケーションの創造
「デザインによって情報格差を解消し、コミュニケーションを創造する」というのが「図文不符」創設の目標である。
張志祺は都市設計学科の出身で、大学3年の時に都市再開発に関する文章を発表したことがある。分かりやすい文章と明晰な分析で、文林苑事件(台北市内の都市再開発に一軒の住民が反対して立ち退きを拒否した事件)を説明した。その後、彼はInfo2Actインフォグラフィックスチームに参加し、そこで国際企業学科出身の王成祥と出会った。二人は意気投合して一緒にチームを組むこととなり、世の中のインフォメーションの在り方を変えるために活動し始めた。
二人はさらに同じ志を持つ仲間を集め、最初は4人だったチームが今では24人に達する。そのメンバーの専攻は、デザイン、アニメーション、情報工学、看護、中国文学、政治、法律、生物医学、公衆衛生など広い分野に及び、こうしたメンバーがインフォメーション革命に取り組んでいるのである。
では、インフォメーション・デザインによって、どのように革命を起そうというのか。
インフォメーション・デザインは「情報伝達の効率を高める」ことを目的としており、情報アーキテクター、マーケティング・プランナー、ビジュアルデザイナー、イラストレーターなどからなるチームで制作する。ひとつのインフォメーションを、おもしろく、わかりやすくビジュアル化するというもので、ひとつのテーマを多くの角度から扱い、一般大衆にさまざまな情報を的確に伝える。理解はコミュニケーションの前提であり、これによってはじめて社会変革の可能性が出てくるのである。
台湾のMRT地下鉄車内で起きた「無差別殺人」というテーマでは、彼らは一般の人々に相反する二つの見方を理解してもらおうと、「MRT緊急護身術——無差別殺人事件を考える」を制作した。このインフォグラフィックスでは、企画の段階から切り口を慎重に考慮し、個人個人の護身術という角度から事件の背景にある原因へと広げている。さらに治療より予防という概念を紹介し、日本やアメリカ、ノルウェーなどの政策も例として挙げている。こうして全面的な情報を提供しつつ結論は出さず、議論の余地を残して人々に考えさせる構造となっている。
台湾ではMRTの車内で無差別殺人事件が発生し、続いて女児が無差別殺人の被害に遭うという事件があり、このインフォグラフィックスはネット上で1万4000回にわたってシェアされ、フェイスブックでも多くの反響と意見が見られた。こうしてインフォグラフィックスを通して社会の議論を巻き起こすという「図文不符」の目標が達成できたのである。
(右)「ロケット研究センター」の資金募集を呼びかける。ロケット発射がもたらす産業の転換をビジュアル化してわかりやすく説明している。