医療情報のクラウド化
さらに、マスクが公平かつ便利に手に入るよう、世界で唯一、健康保険カードが活用されることとなった。ノーベル医学生理学賞を受賞した日本の本庶佑氏も、日本のメディアの取材を受けた際、台湾でIDナンバーカード(健康保険カード)を通して個人の医療情報が分かるようにしている方法は、感染症対策において参考になると述べている。
台湾政府は2月3日に、2月6日からマスク購入実名制を導入すると発表したが、この2日の間にどれだけ複雑なプログラムの構築があったかは、あまり知られていない。身分認証から金流、物流まで極めて複雑な作業となったのである。
これらはすべて2003年から全民健保カードのIC化を実施したことによって実現可能となった。国民一人一人の受診や用薬の情報が一枚のカードのチップに記録されており、受診のたびにクラウドサーバーとつながるのである。2015年からは、この健保カードで税金の申告もできるようになり、健保カードで身分認証ができるため、マスク購入の実名制が実現したのである。
新型コロナウイルスには無症状の感染者がいて、潜伏期間中は検出できないという特性があることが、感染拡大を抑えられない大きな要因となっている。そこで、迅速に診断する方法の確立が極めて重要になる。
台湾でも多くの研究機関が新型コロナウイルスの検査キットや治療薬、ワクチン、技術支援などの研究を進めている。中央研究院遺伝子研究センターと国立衛生研究院も、それぞれ新型コロナウイルスタンパク質を識別するモノクローナル抗体を発見し、近々技術移転による量産が可能だとしている。
感染症対策に求められるのはスピードだけではない。検査の精度も確保しなければ、偽陰性の感染者を見逃すことになる。4月、工業技術研究院バイオメディカルテクノロジーおよびデバイス研究所は「核酸分子検出システム」を開発したと発表した。精度は90%で、60分で検査結果が出せ、また飲料缶ほどの大きさであることから、第一線の医療関係者が携行して検査することができ、住宅地や空港などで特定のハイリスクグループの検査を行なえば、潜伏期間中でも検出できる。この検査キットは7月から量産体制に入る予定だ。
全国民を総動員することで、台湾は世界でも模範的な成果を上げることができた。