台湾人の心を表現
このコンクールへの参加のハードルは低い。スマートフォンさえあれば、自分が感じる最も美しい台湾の姿をとらえることができる。
コンクールで1等に輝いた頼凱威さんは良い例である。30歳過ぎの彼は、普段は家族経営の万年筆事業に従事しており、映像を専門的に学んだこともなければ、器材もなく、スマホで周囲の暮らしを記録してきただけだ。応募期間がちょうど旧正月の時期だったため、優勝作品の「発紅包(お年玉)」では、大晦日に家族全員が食卓を囲み、年長の人がお年玉を配る様子を撮影した。「祖母は2013年に交通事故で亡くなりましたが、以来、その遺影も一緒に大晦日の食卓を囲んでいます」と頼凱威さんは言う。
この「一秒で台湾を見せる」コンクールに出品するため、彼は常にスマホを持ち歩いた。「初めて映像を通して周囲の人物や物事を見つめた時、今までとは違う角度から物事を見ることができるようになりました」
世新大学放送大学院を卒業し、映像関係の仕事をしている韓修宇さんは2等と6等、さらに佳作の三つの賞を取った。2等に選ばれた作品「蟻」は資源ゴミの回収を行なうお年寄りたちの姿をとらえたものだ。「毎日早朝、資源ゴミの回収をするお年寄りたちが、一人また一人と六張犂から麟光新村の回収ステーションへ向かう姿は、まるで働き蟻の行列のようなのです」と言う。
資源ゴミを回収するお年寄りの他、養老院や野良犬収容施設なども韓修宇さんが関心を寄せ、記録している題材だ。いずれも人々に前向きの愛を感じさせる映像である。
影像制作というと若い世代に有利なようだが、年配者からの応募も少なくなかった。
「温かな手」で4等、「弱者団体への思いやり」で佳作を取った徐啓衡さんは、すでに50代だが、外出するたびに映像で何かを記録する習慣がある。最近は仕事を辞めてアマチュアカメラマンになり、ショートムービーの制作に打ち込んでいる。今回のコンクールには11作品を応募し、そのうち6作品がノミネートされた。「温かな手」は、新店で台風による土石流災害が発生した後、新店慈済病院の院長が被災者を見舞う様子を見つめる。「弱者団体への思いやり」は、台北東区の繁華街で、弱者団体のチャリティ販売に応える人の姿をとらえた。「こうした人情や温もりこそ、台湾の美だと思います」と徐啓衡さんは言う。
台湾の美をとらえた一本一本のショートフィルムは、まるで天に上るランタンのようにそれぞれが輝きを放ち、全体が合わさって大きな力となる。