絵本は絵本に留まらない
台湾の創作者を紹介することが絵本館の目標とされ、四半期ごとに絵本作家一人の展示を行う。展示期間中の絵本館の活動は、作家の作品をメインに企画される。展示前には朗読の読書会を開催し、ボランティアや関心のある一般の人々と共に作家の作品を読み込む。また作家を招いて創作の理念を共有し、作品に関する一連のイベントが企画され、展示は単なる一過性の絵本展に留まらない活動となる。
絵本館が最初に招いた絵本作家は、台湾では珍しい版画絵本作家の張秀毓で、『父の友善茶園』『お爺さんのガラス屋』など、台湾情緒溢れる作品が知られる。その展示では、新埔の干し柿を描いた『お祖母ちゃんの灯篭樹』を取り上げた。町育ちの子供の安安が、最初は田舎を嫌っていたのだが、お祖母ちゃんの家で柿を干す作業を手伝いながら、おばあちゃんの優しさや、近所付き合いの人情味に触れて、人の温かみを感じていくという物語である。
みんなで床に座って、館員が生き生きと物語る灯篭樹の物語を聞き、版画の制作技法の解説を聞いてから、皆で版画制作を体験する。生れてはじめて版画を体験した子供たちは、自分で作った版画を開いてみる瞬間、喜びと驚きと達成感で目を輝かせる。
一連の体験イベントで、体験者はより深く絵本作家を理解できるようになる。これまで多くの場所で講演や展示を行ってきた張秀毓だが、これほど多面的に絵本を紹介するのは初めてだと陳館長に語った。陳館長はこれに答え「絵本館の場を使い、台湾の創作者を紹介し、紹介しながら一般の人との交流を図りたいのです」と語る。
海湾絵本館では5月中旬に、台湾の山林の美しさを繊細な画風で絵本に収めた作品で知られる絵本作家張又然を紹介する。『春神の踊る森』『少年シラヤ』などを出版してきた絵本作家だ。今回は、最新作『青いワンピース』を軸に、藍染の体験イベントを企画している。
壁一面の絵本と、楽しい朗読。海湾絵本館は大勢の子供たちの来訪を待っている。