真珠に連なる海洋外交
2016年7月、台湾と国交のあるソロモン群島のマナセ・ソガバレ首相が台湾を訪問した時、スケジュールにLuperlaジュエリー視察が含まれていた。精緻なサンゴの工芸品や、国際的に知られた真珠のアクセサリーを目にして、同じく島国の首相に深い印象を残した。感銘を受けた彼は、現地でワークショップを開き、Luperlaの経験を現地の職人に伝えてほしいと考え、帰国後に外交部を通して呂華苑董事長を招待した。
その話を聞いた呂董事長は即座に引き受け、アメリカ在住の姉の呂華蕙と共にソロモン群島に向かった。呂華苑は100キロ余りの加工用器具とネックレスなどの素材を9箱に詰めて、台湾を出発し、呂華蕙はハワイから直行した。外向的で積極的な呂華苑は講義を担当し、手先の技術に長け、アイディア豊富な呂華蕙がワークショップでシェル加工技術の実演を行った。
ソロモン諸島では加工器具が手に入りにくく、豊かな海洋資源と伝統的な手工芸はあるものの、アクセサリー加工は少なかった。ワークショップに参加したのは、ソロモン諸島各地から選ばれたクリエイターで、美に関して鋭い天分を具えているので、加工技術を身に着ければ、繊細なアクセサリーを作れる。
今回の訪問では、呂華苑、呂華蕙の講義に加えて、4台の加工機器を持ち込んだ。それまではシェルを磨くのに手間と時間がかかっていたが、機械を使えば貝殻はすぐに滑らかに光りを帯びる。また小さな穴をあける専用の機械があれば、何回も鑿を振るう必要はない。初めて見る機械に好奇心満々の参加者は、矢継ぎ早に質問を繰り返した。島では電力供給がままならないのだが、それでも何とか自分のところに機械を置きたいと希望していた。
「南太平洋の島々には独特な伝統工芸がありますが、機械による加工技術がありませんでした」と呂華苑は言う。今回、二人は工芸の加工技術を伝授すると共に、参加者の自由な発想により、その創造性を発揮してもらった。ワークショップの最終日には、特に時間を取って、二人が持ち込んだ材料を用いて、自由な発想でアクセサリーやネックレスを作ってもらった。この3日間のワークショップを経て、「自分は台湾から来た友人です」と何回も繰り返し語りながら、二人と参加者は次第に打ち解けていった。
二人はソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相の招きにより初めてこの地を訪れたが、シェルや真珠の加工を通して連ねてきた民間の海洋外交は初めてではなかった。ソロモン諸島での3日を終えると、呂華蕙は南太平洋大学の織物セミナーに参加するためマーシャル諸島に向かった。
呂華蕙は10数年前に友人に誘われて訪れたのをはじめとして、すでに7回もマーシャル諸島を訪ねている。
マーシャルの人々は豊富な海洋資源を持ちながら、利用方法を知らない。豊かな資源を擁する南太平洋の島々では、何の価値もないように見える貝殻でも、技術と発想次第で美しいアクセサリーに変身する。そこでマーシャル諸島で工芸技術の伝授を始めたのだが、環境を汚染する廃棄ガラス瓶まで、彼女の巧みな手にかかると、美しいアクセサリーに変身するのである。
呂華蕙の巧みなアイディアで、マーシャル諸島の海岸に打ち上げられたガラスが美しいアクセサリーに変わる。