盛夏の初め、ホウオウボクが花をつけ、別れを惜しむ歌が響き渡る。卒業のシーズン、学校を出て就職する人もいれば、海外留学する人もいる。夢を追って起業する人もいれば、これからじっくり前途を考えようという人もいるだろう。いずれにせよ、青春の記憶は、人生の記念アルバムの中で後々何度もめくる大切な一章である。
だが、生き馬の目を抜く現代の職場環境は刻々と変化しており、そうした中で多くの若者がその度胸と衝動をもって、一人で、あるいは仲間とともに起業の道を歩もうとしている。彼らは成否や勝ち負けなど気にしない。自分の青春を賭け、何も顧みずに正しいと思う道をがむしゃらに突き進んでいく。自分の代わりは誰もいないという自己肯定と他者からの肯定こそ、おさまりそうもないブームとなった「青年の起業」が追求する価値なのであろう。
今月号の巻頭特集「若者たちの起業」でお伝えしたいのは、青春の実験精神の実践と、自分の志を全うしようとする決意、そして苦行僧にも似た勇気と行動である。若さゆえの怖いもの知らずが起業で直面する数々の困難を目の当たりにすると、記事を読み進めるのが辛いこともあるが、彼らの人生は、まるでこの青春の勇敢な物語を綴るために存在するかのようでもある。今月の『光華』でご紹介する「若者の起業」の六つの物語を是非ご覧いただきたい。
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『光華』では、昔から暮らしに欠かせないとされてきた「柴米油塩醤酢茶」の「開門七件事」を7回に分けて深く掘り下げていく。先月号の「柴」の特集は大きな反響を呼び、今月号ではさっそく2番目の「米」を特集することとなった。香り高く、しっとりとして、もちもちの米の歴史と物語、そしてイノベーションをお読みいただきたい。また、今月号から新たに「都市めぐり」シリーズがスタートし、台湾の各都市の広く深い文化とビジョンをご紹介していく。最初にご案内するのは南台湾の港町・高雄である。「歴史ある建築物」では、日本時代の台南州庁、現在の国立台湾文学館の歴史を紐解き、百年の歳月の輝きを振り返ってみたい。
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若者の起業の道は険しい。ここにご紹介した六つの事例の他にも、まだまだ大きな夢と大志を抱いて努力を続ける若者は大勢いる。成功してもしなくても、それは人生の糧となる青春なのだから、ともに彼らを応援しようではないか。