情報砂漠のフロンティア
ICDFの「カリブ海地域ICT協力プログラム」は、友好国の国立情報センターの設置から始まった。2007年からプログラムに参画する凌網科技(Hyweb)の馬宜信が当時を振り返る。台湾から呼んだ内装業社と共にネットワーク回線や二重床の設置を行った。国によっては何もないところから情報センターを構築した。
顔銘宏は、国立情報センターは3つの役割を担うという。第一はリソースセンターである。情報システムのホストはすべてセンターに置かれる。ホストにトラブルがあれば政府のオペレーションがストップするから、ハイスペックの情報セキュリティが必要である。台湾の指導で、現在セントルシア、セントビンセント、ベリーズの国立情報センターがISO27001の情報安全認証にパスしている。これらの国で初めてISO認証を取得した政府機関でもある。
第二は教育訓練センターである。国立情報センターにはパソコン教室が設置され、カリキュラムは基礎のOfficeからプログラミング、システム開発といった中上級まである。台湾の長期にわたるサポートによって、こうした情報センターが国際的なメーカーの認証を取得した。ベリーズのパソコン教室はマイクロソフト社の認証を得ているから、国民は情報センターでマイクロソフトの認定試験を受験でき、認証センターが設けられた他国に行かなくて済む。これがICDFの現地情報水準を高める重要な方法になっている。
最後の一つは、コンサルティングセンターである。ICDFの実施手法は、必ずしもシステムを構築してそのまま使用させるのではなく、台湾から専門家を呼び寄せ、システム開発業務を指導し、現地に共同参画してもらう。その過程でノウハウを伝授し、友好国が自力でシステムを保守できるようにし、さらにシステム開発力も備えさせる。センターのメンバーは長期的なICDF協力への参画と、台湾がいつも専門家を派遣して指導に当たっていることから、他の省庁がデジタル化を進めたい時にはコンサルティングができる。「国の発展の先鋒部隊です」顔銘宏がいう。
これまでセントクリストファー・ネービスのJNF国立病院では紙のカルテで作業をしていたが、台湾のICT技術を活かした支援によって、受診カードをスキャンするだけで患者の情報が得られるようになった。