経済が急成長を遂げていた1980年代、台湾では社会の開放が進み、さまざまなパフォーマンスアートが百花斉放の時代を迎えた。舞台において、変化するライトが照らし出すのは表現者の瞬間の姿であり、それをとらえるのは写真家にとって大きなチャレンジである。しかし、何人かの優れた写真家が、今日まで台湾のパフォーマンスアートを記録し続けている。
許斌と言えば、舞台写真の世界では知られた存在である。フォトジャーナリストだった彼は、1992年に国家音楽庁・国家戯劇院の「PAR表演芸術」の写真撮影を依頼され、以来、演劇の写真を撮り続けてきた。
一般に演劇写真と言えば、舞台公演の模様を撮影するものだが、許斌は作品の誕生までのプロセスも見せたいと考える。「稽古では、演出家は役者でもあり、ロミオになったり、ジュリエットになったり、杜麗娘や柳夢梅にもなります」「演出家には自分だけの思い入れがあり、誰にも理解されないというプレッシャーに耐えています」と許斌は言う。
「小さな空間の大きな世界……すべてが一身にかかっているのです」許斌は写真を通して、稽古場における演出家や振付家、表現者の真の温度を伝えている。
稽古中、演出と脚本の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)が考え込む。
(左)『微幅——回返於生存之初』を演じる舞踊家・蘇文琪。
幾米(ジミー)の絵本『向左走・向右走(君のいる場所)』が黎換雄監督の手によって舞台作品になった。
舞踊家、振付家であり演出家でもある劉守曜が『Shapde 5.5』の稽古をする。