孫と一緒に遊ぶ
このほかに、祖父母と孫の世代の隔たりをなくそうと、コベストロは第1回「祖父母と孫の魔法研修」を開いた。「おばあさんの魔法のキッチン」をテーマに、厨房にある材料を使い、おいしい甘いお菓子を介して祖父母と孫の距離を縮める。「おばあちゃんは、こんなにすごいんだ!」と孫たちが尊敬の声を上げれば、お年寄りも恥ずかしそうに、それでも誇らしげな笑顔を見せる。
「実験自体は非常に簡単なものですが、祖父母と孫の関係に微妙な変化が生まれます」と言う。オープンな実験は一段階ずつ進めるもので、最初は「カルメ焼き」作りから始め、二つの科学現象である密度と化学変化を観察する。カルメ焼き作りが終わると、続いて密度に関係する「重曹ロケット」の実験を行なう。重曹と酢を混ぜて二酸化炭素を発生させ、安全措置を施したうえで、発射させる。
「祖父母と孫の研修は、参加者を募集するとすぐに定員が埋まりました。70代の年配者も多く、最高齢は90歳です。しかも8割が実際にこうした実験をするのは初めてということでした」と語るコベストロ社コミュニケーション部門の陳郅華マネージャーは、年配者に対する子供たちの意識が変わったことを喜んでいる。
「私たちは3週間連続で、北部、中部、南部の各地で9回の活動を行ない、合わせて祖父母と孫150組が参加しました」と陳郅華は言う。
「祖父母と孫の科学研修」の素晴らしい成果によって、設立5年のコベストロ社は「天下雑誌」による企業公民賞に4年連続して輝き、在台ドイツ経済弁事処が選ぶ在台CSR模範ドイツ系企業にも選ばれた。「高齢化は世界的な趨勢です。私たちはこれを機会に生涯学習を提唱し、一緒に実験をすることで、祖父母と孫の関係を活性化できればと考えています」と、これらの活動に積極的に関わっている同社総経理の李銘城は言う。
「当初は、実験は成功率が高いほど達成感も得られると考えていましたが、実際にやってみて気付いたのは、失敗も貴重な経験だということです」と陳郅華は言う。祖父母と孫が一緒に困難を克服して心を通わせていくのである。
もう一つ、科学教育普及のための新しい教材を打ち出しているのはLIS(台湾オンライン教育発展協会/Learning in Science)だ。90年代生まれの厳天浩は、2021年に国際リテラシー学会(ILA)が選ぶ、最も影響力のある30歳以下のリテラシー教育リーダー30人の一人に選ばれた。
台湾コベストロはテレビや雑誌の科学教育顧問を招いている。写真は、科学ゲームの本を多数出している許兆芳(毛虫先生)が台北啓聡学校の生徒に実験のやり方を教える様子。