住民の案内で歩く
★造山運動と山崩れ:
台湾大地震記念地
住民は主に上坪、中坪、下坪地域に住んでいる。これらの地域は造山運動によって河岸段丘が隆起した地域である。草嶺だけでなく、台湾全体の地形や景観は600万年前にユーラシアプレートとフィリピン海プレートによって押し上げられた結果で、草嶺ではさまざまな角度に傾いた地層が見られる。
私たちを案内してくれたのは草嶺コミュニティ発展協会の廖偉智・総幹事で、草嶺の景観を鑑賞しながら、地質的な特徴や環境について話してくれた。
飛山景観台から出発する。かつての大地震で生まれた堰止湖「新草山潭」は5年で消失した。2004年の七二水害で土砂が堆積して堰が決壊し、再び河川となったのである。
実は堀畓山の崩落は初めてのことではなかった。文献によると1999年の崩落によってできた草嶺潭は4代目なのである。造山運動で形成された堀畓山はもともと傾斜しており、斜面の下部に清水渓が切り込み、支えが効かなくなると崩落や地滑りを起こすのである。
草嶺の大地は変化し続けているが、そこにも法則が見られるため、地元の人々は大地とともに暮らす術を見出してきた。
★風化と浸食:
水濂洞、青蛙岩と幽情谷
同行してくれた草嶺村幹事の陳瑩運は「故郷のことは自分たちでやらなければ」と考え、余所の土地で働いていたが、帰郷して地域の仕事に就いた。この日、私たちに同行して地域の現況を話してくれるとともに、道路の状況も確認していた。
続いて、新草嶺潭が消失した後に再び水面に出てきた水濂洞を訪れた。
水濂洞は懸谷式の滝だ。岩層の下部が清水渓に浸食されて巨大な洞窟となり、そこへ滝が流れ落ちている。その水で身が洗い清められるような感覚を覚えつつ近寄っていくと、カエルのような奇岩(青蛙岩)が蜂の巣岩と鍾乳石洞穴の上に座っているのが見える。岩壁に見える数々の孔などの「傷」は堆積岩の風化によるものだ。
高みから見渡すと、神が創り出した世界を眼下に納めることができる。何万年もの堆積によってできた岩の層と層との距離は神秘的な美しいバランスを見せる。幽情谷には甌穴が連なっている。これは水滴によって岩に開いた孔である。
★河岸段丘と生物堆積:
万年峡谷
万年峡谷へ行く前に廖偉智はこんな話をしてくれた。かつて彼が友人とこの谷を発見した時、数百メートルにわたってV字型にえぐられていることから、何千年、何万年もかけてえぐられたに違いないと考え、「万年峡谷」と名付けたのだという。
万年峡谷はまさにその名の通りの景観だった。両岸の岩壁が層を為し、地層ごとに含まれる鉱物の違いから白や灰色、黄色、褐色などの美しい縞模様を見せている。層の中には石灰華が見え、また貝などの化石が拾えることもある。
壮大で美しい万年峡谷。水に洗われた地層の線がくっきりと見える。