アスペルガー症候群とはどのようなもので、周囲はどのように接すればいいのだろうか。
アスペルガー症候群は、1944年にはすでに指摘されていたが、その後、症状の明確な定義が進んで1980年代に注目され始め、台湾ではこの5年ほどの間に取り上げられるようになった。
アスペルガー症候群は、自閉症やレット症候群などともに「広汎性発達障害」のカテゴリーに含まれる。国外の統計によれば有病率は0.4%、台湾には明確な統計数値はないものの、「増えている感じを受ける」と台湾大学児童心理衛生センターの丘彦南医師は言う。
アスペルガー症候群は、知能が低いわけでも、学習能力が乏しいわけでもないが、社会への適応面で明らかな障害が見られる。「彼らはできないのであって、やらないのではありません。だから叱るばかりでは状況を悪化させます」と丘医師は説明する。
国立台北師範学院特殊教育センターの楊宗仁さんは、アスペルガー症候群の指導法に関する本を翻訳した。同書ではこの症候群の三大障害として、社会的相互行為、コミュニケーション、思考の柔軟性における障害を挙げている。
社会的相互行為では、同症候群の児童は個人空間に対する意識が鋭敏で、他者に近づくことを好まない、相手を直視しないなど、相互行為が苦手だ。
また、コミュニケーションとはどういうことなのかが理解しにくい。助けを求めたり、自分の権益を保護したりすることを知らず、話し方にも抑揚が乏しい。
想像力や思考回路も柔軟性に欠け、変化を嫌う。少しでも変化を感じると不安になり、騒ぎ立てる。
アスペルガー症候群は、これまで「高機能自閉症」と呼ばれていたものが名前を変えただけだ、と言う人もいる。また、性格的に欠点がある場合と区別できないのではないかと言う人もいる。「性格と病状の境目はもともとあいまいです」と、丘さんはグレーゾーンの存在を認める。
アスペルガー症候群と診断されても、今のところ有効な治療法はなく、それを受け入れ、毎日の暮らしで注意を払うしかない。発展状況も個人差が大きく、成長するにつれて改善する場合もあれば、反対に深刻になることもある。
一般に、生活で何か新たなことがあって克服しなくてはいけない場合に、症状が明確になることが多い。丘さんは「子供に明らかな障害がある場合は、それを直視し、できるだけ早く対処すべきです。だがそれほど症状が目立たない場合はいっそ性格的なものとし、ことあるごとに丁寧に説明して聞かせ、改善させていくほうがいいでしょう。治らないわけではなく、ただ忍耐と時間が必要なのです」とアドバイスする。
教室で実際に接する教師にとって必要なのは、子供一人一人の違いを受け止めるという態度と、症状や対処法を知ることだ。例えば彼らは時間内に作業を終えるのが難しい。テストなどは時間制限を与えないなどの処置も考慮していい。