生活文化を映す客家の米食
米は中国人の主食で、美食で聞こえる台湾では昔から様々な調理法が発達し、その多様な姿は地方ごとの特色を表し、生活文化を反映してきた。
客家の人々は倹約勤勉で知られ、貴重な食料を大切に扱ってきた伝統がある。正月や年中行事の時には、しばしば甘い菓子を作って客に振る舞う。さらには糯米を使い、腹にたっぷりたまる甘味、塩味の米食料理を作ってきた。その中でも、客家語で「粄」と呼ぶ米粉を捏ねた餅の一種は、閩南語では「粿」と呼ぶもので、蒸し、焼き、あるいは揚げたり煮たりして食してきた。餡を入れていろいろな形に捏ねたまんじゅうは、台湾を開墾した昔の客家人の足跡を思い起こさせる。
客家の米食文化と言えば、米粉を太めのうどんに打ち、しっかりしたコシのある「米苔目」があり、またきしめんのような平打ちの「粄条」もある。粒を残さずに捏ねた米粉の粽は腹持ちがいいし、香りのいい葉に載せて蒸した野菜まんじゅうもある。また丸い蒸籠で丸く平たく蒸した米粉の餅は、年毎の繁栄を祈る旧正月の味である。中でも特別なものとしては「糍粑」がある。
その起源はと言うと、昔、客家の人々は米を搗いてから臼に残った米の欠片を集めて蒸し、これを搗いて餅状にしていたという。この搗く動作を打糍粑と呼んだ。搗いてから丸め、砂糖やすりゴマ、ピーナッツの粉を付けておやつにしたり、冠婚葬祭や誕生日などの折にお客をもてなしたりしたという。
閩南の米食は幸運をもたらす
閩南では穀粒には超自然的な穀霊が宿っていると信じていて、冠婚葬祭や祭りの時に、めでたい図案をかたどった米粉の菓子を作って、一家の無病息災を祈った。
閩南の人々の伝統習俗では、子供が生れて三日後にゴマ油で煮た鶏と油飯(具材とともに炒めたもち米を炊いたおこわ)を親戚に贈り、1カ月後になると、子供の一生が円満に無事に過ごせることを願い、母方の祖父から米粉で作った赤いまんじゅうが届く。満1歳になると亀の形の赤いまんじゅうを二個作り、子供に片足ずつ踏ませて、亀の長寿に倣い長生きすることを願う。また米の香りを子供の口に移せば、香りのいい口元で成長してから人に好かれるようになると言われている。
結婚式ともなると、新婚の夜に新居に入るときに、新婦は白玉を二つ掬って食べる。夫婦が仲良く、円満に暮らせることを意味する。
旧正月の餅菓子はその年の繁栄を願い、清明節になると祖先にヨモギ団子を供える。赤い亀をかたどったまんじゅうは子供を加護し、商売繁盛を意味するし、端午の節句の粽は祖先を祀るものである。師走には竈の神様が天に上がって家の悪口を言わないように、甘い八宝飯や八宝粥でなどを口ふさぎに贈る。こうして季節ごとに米の菓子や餅を作り、一家の平安無事を祈るのである。
一年を通じて、豊かな米料理が台湾の家庭の生活を彩ってきた。
一方、原住民族の食文化と言うと、イネではなくアワが主となる。アワは保存が容易で、病虫害に強く、火が通りやすくて調理に時間がかからない。原住民集落では、それぞれの畑を交代で農作業を行う風習があり、また収穫してからアワを分け合う文化がある。アワの酒と餅は原住民族の代表的な食文化で、冠婚葬祭の折々にもアワで作った様々な料理や菓子は欠かず、それが集落の生活の楽しみであった。
米を挽いて濾過したデンプンを機械で細い麺状に押し出し、それを蒸しあげて、広げて熱を冷ます。複雑な工程を経て、ようやくビーフンが出来上がる。