玉山連峰を眺めながら
田中マラソンのコースは、建築家・姚仁喜氏の設計による台湾高速鉄道彰化駅のそばも通過する。同駅は、アメリカの著名な建築サイトArchitizerによる「A+アワード」の駅部門で2016年に人気投票最多賞を受賞している。
同駅のメインホールの柱は花弁の形にデザインされており、花卉で有名な彰化のイメージにマッチし、エレガントなムードをかもし出す。
内壁に沿って並ぶワシントンヤシの根元には、濁水渓から運ばれた黒土が用いられている。この土は水はけがよく、乾くと粘着性が増すため、移植した植物が枯れにくい。「最も特別なのは、彰化駅の入口から東を見ると天気の良い日には玉山山脈全体が見渡せることです。どのピークもはっきりと見え、彰化駅ならではの魅力になっています」と張錫池さんは言う。
コメ生産の需要から日本統治時代に建てられた「台中州農会田中倉庫(現「彰化県農会田中倉庫」」は、かつては肥料の配送所で、敷地内に肥料運送のための鉄道が敷かれていたが、後に穀物倉庫となり、それが現在、歴史的建造物として保存されている。園内には精米場も残るなど、昔の風情を色濃く留めており、彰化県はここを将来、芸術文化の展示や公演を行う場にする計画を立てている。
ほかにも、田中マラソンのコースは「社頭靴下産業パーク(社頭織襪園区)」の中も通るので、大会当日はエイドステーションで多くの靴下メーカーが、ランナーたちに台湾製ソックスを配る。社頭靴下産業パーク発展促進会の陳敬霖理事長は「台湾製の靴下がこんなに精緻できれいに作られていることに、ランナーたちは気づいてくれるでしょう」と言う。
大会後に贈られる記念品は、田中の有名な穴窯「田中窯」でデザイン・制作されたものだ。素朴で自然を感じさせ、その土地ならではの味わいがある。
「コース沿いのあちこちで、田中の豊かな文化が感じられます」田中マラソンは、美しい風景、温かい人々、力ある産業といった、この小さな町の魅力にふれるマラソンなのだ。
「台湾米倉」の田中マラソンが終わってもらうおみやげには、やはり田中米が欠かせない。(林旻萱撮影)