子供たちの美意識を育てる
新しい教科書を出した時に、子供たちから「どうやったら夢がかなうのか」と問われ、張柏韋は、多くの物事は思っているほど難しくはないのだから、とにかくやってみることだと答えた。最初は50点しか取れなくても、続けていれば2回目、3回目はもっと良い点が取れ、夢に近づくことができると。彼らの作る新しい教科書は、代を重ねるたびに新たな目標を立てている。最初のバージョンで新しい試みの価値を確認し、第二のバージョンでは学年ごとの可能性を探った。
そして2017年の第三バージョンでは、国語だけでなく、英語、数学、自然、社会の教科書にも手を広げ、それぞれ担当デザイナーを決めて企画した。デザイナーはキュレーターのような役割を果たし、それぞれの学科のイメージから自由に発想してデザインしていった。
陳慕天は、デザインの任務は学科ごとに異なると言う。社会、国語、自然、英語、算数の順に、前の方のものほど、現行法規と実際の使用状況は合致しており、逆側はそうした制限がないので、デザイナーが自由に創意を発揮することができる。こうした試みを通して、政府にも教科書の可能性に気付いてほしいと考えている。
方序中がデザインした算数の教科書を見ると、左右に大きく開く折り込みページになっていて、子供たちは自由に折りたたんでトランスフォーマーのように形を変えることができる。王艾莉が担当した自然の教科書は、実験の器材や方法が実際の写真で掲載されている。各ページの背景の色も実験の特性ごとに異なり、気体の実験なら青、燃焼の実験なら温かい色が使われている。
社会科の教科書は、情報デザインを得意とする「図文不符」のチームが担当し、さまざまなイラストや図によって情報が一目瞭然に整理されている。夜市のイラストを通して食べ物を紹介するとともに、ジェンダー平等や先住民族のテーマなども表現されており、生徒と先生の討論のきっかけとなるよう工夫されている。
馮宇則がデザインした国語の教科書は、内容に即した図やイラストが配されている。例えば、スケジュールというテーマの文章には時間表が入っており、子供たちが自分の一日の計画を書き込めるようになっている。陳永基がデザインした英語の教科書はモダンなデザインにあふれている。表紙はカラフルなマス目のクロスワードパズルになっていて、子供たちが自由に遊べる。
これらデザイン性の高い教科書は、すでに台湾各地の170余りの小学校に送られている。12年にわたる義務教育の中で、こうした美しい教科書に触れられれば、色彩や美に対する感覚も育まれ、創意が芽生えていくことだろう。
このプランは教科書に対する今までのイメージを大きく変えた。これによって、すべての教科書の大幅な改編が進むことはないかも知れないが、書体やイラスト、レイアウト、さらには定価などの規制が緩和されていけば、より多くの優れたデザイナーが教科書編纂の列に加わっていくことだろう。「美感細胞」は教科書の新たな可能性を各界に示すことができたのである。
教室の環境から教科書のデザインまで、子供たちの人生において重要な媒介を変えていくことにより、美術の授業や美術館へ行くだけでなく、暮らしの中で美に触れることができるようになり、美学教育の定義も変わっていくことだろう。
美意識は環境によって育まれると考える黄国平は、フェイスブックの「王子の教室」ページで教室美化のさまざまな工夫をシェアしている。(黄国平提供)
美意識は環境によって育まれると考える黄国平は、フェイスブックの「王子の教室」ページで教室美化のさまざまな工夫をシェアしている。(黄国平提供)
温もりのある教室で、子供たちはそれぞれお気に入りの場所で本を読む。(林旻萱撮影)
教室は授業を受ける場であるだけでなく、生活の空間でもある。その環境が美しければ、自然に美意識も育まれる。(林旻萱撮影)
左から、張柏韋、林宗諺、陳慕天の3人は「美感細胞」を結成し、台湾の美学を向上させようとしている。(林旻萱撮影)
教科書のページに多くの余白を残し、質の高いイラストや写真を配置する。授業では知識を学ぶだけでなく、無意識のうちに美意識も育むことができる。
「美感細胞」は、美しいデザインの教科書を通して子供たちに美に触れてもらいたいと考えている。
「美感細胞」は、美しいデザインの教科書を通して子供たちに美に触れてもらいたいと考えている。
「美感細胞」は、美しいデザインの教科書を通して子供たちに美に触れてもらいたいと考えている。
「美感細胞」は、美しいデザインの教科書を通して子供たちに美に触れてもらいたいと考えている。
「美感細胞」は、美しいデザインの教科書を通して子供たちに美に触れてもらいたいと考えている。
デザイナーは教科書に拡張現実やスクラッチなどの要素を加え、子供たちの想像力を刺激する。
デザイナーは教科書に拡張現実やスクラッチなどの要素を加え、子供たちの想像力を刺激する。
子供たちの暮らしにデザインを取り入れれば、美学教育の可能性も広がっていく。