細部にこだわり 計画は慎重に
7年前、ペトルとエヴァは「ビーストランナーズ」を立ち上げた。ペトルの名は、彼が2014年に嘉明湖トレイルランニングで3時間53分の新記録を打ち立てた際に、ランナーと登山家の間で有名になった。またコロナの期間に、道に迷った登山客の捜索と救助活動を続けたことで、誰もが知る有名人となった。しかし、一年に一度開催されるトレイルレースこそが彼の本業である。
2012年に縁あって台湾を訪れた彼は、台湾の山林に魅せられ、運命の人と出会い、家庭を築いた。こうして彼は台湾にオフィスを開設して、トレイルマラソンを開催することになる。
開催当初はわずか数百人だったが、現在では1000から1500人が40以上の国から参加する国際イベントとなった。スタッフのコアメンバーは彼とその妻の2人だけで、毎年台湾各地から120名を超えるボランティアが駆け付け、協力して、この大きな大会を成功させる。
エヴァは、ペトルがあらゆる業務を一手に引き受けている理由は、彼の母親が注意深い人で、父親が自分のことは自分でする性格であることが関係しているかもしれない、と話す。
取材をした日、ペトルは草刈り機を背負って、一年で人の背丈にまで高く成長した草木を注意深く刈りながら、コースの解説をしてくれた。
どんなに簡単に見えることでも、ペトルは決して手を抜かない。彼が携帯電話を取り出して地図を表示すると、それはカラフルに色分けされていた。何月何日に山へ登り、何時間かかったのか、また植物の成長状況までが詳細に記録されている。毎年、コースをメンテナンスする際には、この記録と見比べて異常がないかを確認するという。
何をするにも綿密な計画を立てる彼は、山での救助も、大会の企画も、コンピューター上で完璧に研究した後、詳細な計画を作成する。エヴァはペトルが近所の友人の誕生日も表を作成して記していると明かした。
このように細部にこだわり、大会の隅々にまで完璧を求める彼は、コースマーキングも自身の手で設置する。
コースマーキングの必要性については様々な意見があるが、この布は参加者の安全のために重要だし、しかも山林の環境保護にも注意を払わなければならないとペトルは考える。それで、彼は除草を終えると自身の手で「ビーストランナーズ」のロゴが入った布をコース上に設置するほか、設置の方法もポイントを絞って、各コースのランナーの特性や思考パターンを分析して、選手を正確なコースに導く位置に設置していく。
細かいところで言えば、補給する水の置き位置と補給食料の内容、果物の切り方まで、大きいところでは、各チェックポイントの終了時間や各コースのグループがぶつからないような出発時間の設定など、緻密に計画されたフォルモサトレイルは、多くの参加者から高く評価されている。良い噂は足が速い。大会ボランティアの厳啓翁は、自身もマラソン走者だ。トレイル経験が十分でないという理由でペトルから大会へのエントリーを拒否された経験がある。主催者の慎重な姿勢に感じるものがあり、ボランティアとしてこの大会に参加するようになった。実際に大会運営に関わっていく中で、彼らが細かな点に対して厳格で十分な配慮をしていると知り、その理念に共感して、今では彼らの良き友人となった。
毎年40か国以上の選手が参加するフォルモサトレイル。(写真提供:ビーストランナーズ)